私たちの脳は「見たいもの」しか見ていない?

学習や仕事のこと

毎日何気なく見ている信号機。さて、赤信号は左右どちらにあるでしょう?授業でこの質問をされたとき、自信を持って答えられませんでした。歩行者信号ならどうでしょう?赤は上か下か?改めて考えてみると、「えっ、どっちだったかな?」となる人も多いのではないでしょうか。

私たちは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった感覚器官を通じて膨大な情報を受け取っています。しかし、そのすべてを処理できるわけではありません。脳は瞬時に「重要な情報」だけを選び取り、それに基づいて行動します。信号機の場合、位置よりも色が重要。だからこそ、「赤なら止まる」と無意識に判断できるのです。

このような脳の働きを「選択的注意(Selective attention)」と呼びます。何かに集中すると、明らかな出来事にも気づかなくなるという現象です。その代表的な実験がこちら。

▶︎ 動画を見て、白いシャツのチームが何回パスをするか数えてください。
The Invisible Gorilla Test

さすがにこれは見逃さないでしょう?では、もう一つ。

▶︎ こちらの動画では、何が変化したか分かりますか?
Change Blindness Test

私は完全に見逃しました。黒のTシャツの人が一人消え、背景の色が変化していたことに全く気づかなかったのです。

こうした現象は、私たちの日常にも溢れています。例えば、私は長くプリンターのビジネスに携わっていたため、テレビの映像にほんの一瞬でも自社のプリンターが映ると、すぐに気づきます。一方、私の家内は趣味でキルトを習っているので、映画やドラマの背景に飾られているキルトには敏感に反応します。同じ映像を見ていても、注目しているものがまったく違うのです。

また、何か一つのことを真剣に考えていると、ふとした瞬間にアイデアがひらめくことがありますよね。これも、選択的注意が関係しているのかもしれません。脳は、自分が意識している情報を優先的に処理するようにできているからです。

私たちの脳は、実は「見たいものしか見ていない」。そう考えると、日常の風景も少し違って見えてくるかもしれませんね。

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